波打際の舞台日記

音楽ライブ・演劇を中心に、舞台の感想・意見などを書いています。

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角田光代「対岸の彼女」

対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)

3年位前の芥川賞受賞作。話は2組の女性の話が並行して進む。再就職しようとしている子持ちの主婦とベンチャー会社の女性社長。女子高のいじめられ経験のある生徒と一匹狼の生徒。自分と違うものへの憧れと、分からないからささいな言葉で傷つくところが、身近な会話で書き出されている。やや遠景で描かれる主婦の夫にしても類型的な無理解を示しているけれど、多分お互いの真意が届かないのだろうと暗示されている。人のことってほとんどは理解できないから。そう意識していないと。
半分すぎからひたすら号泣しながら読んだ。どこにも行かれなかったという思いと、ほかのありえた人生や高校生だった自分からこんなに遠くに来てしまったという思いが、本の中の人物の思いでもあり、別個に自分の思いであって。人生を選ぶことはできるけれど、どちらでも自分である限り「どこか遠く」には行かれない。ということに気付くほど遠くまで来てしまったわけです。