伝統と創造シリーズ vol.10
演出・振付:森山開次
出演:酒井はな、津村禮次郎、森山開次
2019.2.26.(火)この日は追加公演。能楽堂でダンスというなんとも変わった魅力的な企画のシリーズで、今回はコンテンポラリーダンスとバレエと能のフュージョン。能の演目である「班女」と「隅田川」をベースに、主人公の花子(はなご)を描いた。基本的には元の話をなぞり、ストーリーのある舞台。能の語りで話を進めていく。
とても美しい舞台だった。花子を演じる酒井はなの踊りも、脇を固める津村禮次郎、森山開次の存在感もきれいだし、邦楽をベースにした音楽も美しい。そして照明がとてもきれい。赤やゴールドに見える照明が、普段は電球色(?)にしか照らされていない能舞台を美しく染め上げて、能舞台自体を美しく見せた。演劇としては説明してしまうなどのアラが目立つが、そんなことはどうでもいいくらいの美しさだった。
酒井はなの踊りはバレエがベースなのだが、裸足で踊るので、足の裏がぴったり舞台に付いて、重心が低め。これが能舞台にもほかの人の踊りにもよく合った。土着感のある物狂いの表現だった。
幸せなシーンがぼんやりとそしてとても温かく浮かび上がる。能のストーリーは基本的に過去の思い出を幽霊や老人が振り返るものが多いが、過去の幸せなシーンを浮かび上がらせるための仕掛けという能の解釈なのだろう。納得感があった。