原作:上田岳弘
脚本・演出・出演:渡辺えり
ミュージシャン:三枝伸太郎
出演:小日向文世、のん、他
2019.9.5.(木)オフィス3○○「私の恋人」のマチネを観た。本多劇場のチケットは多分完売の状況。
ピアノ生演奏の音楽劇。歌と踊りが入るが歌は少な目で、ミュージカルのような歌による高揚感はない。主要登場人物以外の4人の女性が歌と踊りで浮遊感を演出する。ちなみに小日向文世は歌わない。
幻想的な内容通りに、濃い夕闇の空気の音楽で、不思議な舞台だった。どこか安定感がなく危なっかしい歌唱は内容に合っていた。
見どころは3人で30の役を演じる早替わり。特に小日向文世は舞台上で役を変えながら演じていて、おおーっという感じがあった。
話は、誰の妄想かも分からない妄想のシーンの連鎖。未来への希望が持ちえない極限状況を訪ねるシーンを渡り歩く。民族が絶滅させられたタスマニア、ナチスのユダヤ人収容所、引きこもりの弟に憎悪される兄。といっても生々しい暴力はなく、言葉によるイメージ喚起が中心。ところどころに生硬な理屈の言葉が入ってくる。
精神というのは物理法則や生死とは別にあるものなのかもしれないと思った。オカルト的な意味ではなく。
目の前の快不快を追求して人類の行き止まりに突っ込んでいくのも人である一方、極限状況だからこそ想像力を働かせるのも人の精神なんだなあと思った。
のんはフレッシュな感じが悪くない。それに影響されてか、ベテランの小日向文世、渡辺えりもリフレッシュしたような引き締まった感じがあった。ちゃんと一緒に作った舞台なんだな。チラシのイメージはやり過ぎ感があるが、舞台はずっとタイトでよかった。