原作:宮崎駿
脚本:丹羽圭子、戸部和久
演出:G2
協力:スタジオジブリ
出演:尾上菊之助、中村七之助、尾上松也ほか
2019.12.16.(月)新橋演舞場で新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」の夜の部をかたつむりと観た。
昼の部の方がチケット争奪戦が激しく、昼は一人分だけ確保できたが、昼と夜の順番が逆になってしまった。というわけで昼の部は後ほど。
【先に追記というか注釈】
夜の部を先に見た段階の感想で、尾上菊之助が事故の影響で手があまり動かない日だったということを前提に読んでもらえると嬉しいです。
映像で見る場合には昼の部から見るだろうから(推奨)、まず昼の部の↓感想↓からどうぞ。
映像で前半から続けてみるとストーリーも理解できるし、手が動いていて、所作事(踊り)も見応えがあった。
・映像は↓こちら↓
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長大なストーリーの全体を追いかける
「風の谷のナウシカ」はコミックスで7巻ある長くて登場人物も多い話。複数の国が戦い、それぞれの国の中では権力闘争がある。今回の歌舞伎はどうやら粗筋を全部上演することを目指したようで、昼夜通しとはいえ休憩を除くと6時間しかないので、駆け足になった。
正直、展開の説明に終始した苦しさがあった。バタバタと駆け付ける人が花道から出入りしまくる。花道の全体がよく見える1階上手側(舞台向かって右側)の席で良かった。2階以上はかなり見切れてしまうような気がする。
原作コミックスを読んでいない私のような人には、ストーリーは予習しておくことが推奨。私はウィキペディアを読んで行ってすごく理解の助けになった。チラシのあらすじは初めのところしか書いていないので、少なくとも夜の部の参考にはならない。筋書(パンフレット)を買って始まる前に読むという手もある。
シーンを楽しむ見どころがあまり作られていないのは、時間の制約なんだろう。ストーリーは思い切ってカットしても良かったんじゃないだろうか、と演劇ファンとしては思った。同じチームで上演した昨年の「マハーバーラタ戦記」のように、一部の話に絞った方がドラマとして楽しみやすい。全編上演に期待してきた人も結構いただろうから、難しいところだが。
ここが見どころ!
歌舞伎的な見どころとしては、紅白の獅子の戦いがあったが、一番歌舞伎の力を堪能したのは女形の戦い。主役ナウシカや別の国の指揮官クシャナが女性なので、女形として戦うシーンがある。これが女形のまま戦って格好良いというのが、なかなかすごかった。
特に、クシャナを演じる中村七之助が素敵。宝塚っぽい美しさと格好良さ。ナウシカ役の尾上菊之助はケガで動きが制約されていたのだろう。問題はなかったが、動きが少ないので印象が薄くなった。
個人的には見どころは大道具。大物や変わったものをいろいろ作っていて、これは必見。そういう意味では「ライオンキング」のような作品といえる。「風の谷のナウシカ」の世界を伝えるタペストリー幕(初めの写真の引幕)はジブリ好きが大喜びだろうし、この作品ならではの大きな虫たちはすごい。龍の頭に羽がある虫がいい。シュワの墓所の文字が動く壁も格好良かった。
テトを黒子が動かすようなキッチュなアナログ感が歌舞伎の魅力でもあるけれど、今回は映像もしっかり使っていた。両方使うバランス感はいいと思う。
大きな大道具をいくつも使うので、セット替えに時間が掛かっていた。不思議な短い休憩時間もセット替えのためかな? このあたりは菊之助の落下事故による怪我の影響でシーンを削ったからだろうか。すごい力の入った作品なのに、もったい感じになっていた。映像はいつ収録した分なんだろう。完全版を見てみたくなった。
【追記】2021年1月20日DVD/Blue-ray発売! 映像は動きがよくて、欠落していたピースがはまったような納得感。
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<上演時間>
四幕目 大海嘯 16:30-17:40
幕間 35分
五幕目 浄化の森 18:15-18:35
幕間 20分
六幕目 巨神兵の覚醒 18:55-19:20
幕間 10分
大詰 シュワの墓所の秘密 19:30-20:30
(観劇時の劇場掲載情報。初めの幕間が食事の時間)
音楽は映画の久石譲のメロディが取り入れられていて、映画「風の谷のナウシカ」との連続感があった。
夜の部の歌舞伎を観た感想としては、環境問題、生命倫理を扱った早い作品だったんだなあ、と思った。生命を扱う科学技術に思いが及んだ。意外とナウシカは救世主にはならなかったような気がする。現状をまるごと肯定したような。
当日券・ディレイビューイング
当日券も毎回あるが、長時間並ぶことは間違いない。
【追記】2020年2-3月には「新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』ディレイビューイング」という映画館での放映が実施された。