作・演出:岡田利規
チェルフィッチュ「三月の5日間」のリクリエーションを配信で観た。
国際交流基金の"STAGE BEYOND BORDERS"という日本を代表する舞台芸術を紹介するプロジェクト内で、2022年3月31日まで無料配信されたもの。
作品は2017年12月にKAAT神奈川芸術劇場 <大スタジオ>で上演された公演で収録された。
「三月の5日間」の初演は2004年。当時大きな話題になり、若い劇団にフォロワーが続出した。気になって戯曲は読んだものの、見るチャンスがなかった。素晴らしいチョイスだと思う。
内容は2003年のイラク戦争開戦の日を含む5日間を渋谷のラブホテルで過ごした男女の話。(ちなみにエロ表現はない)
だいぶ書き換えたらしいが、それでも当時の話がいろいろ出てくる。正直演じてる若い役者は知らないだろう。でも全体としては現代の若者の話と感じるのが不思議(若者が見るとどうなのか興味がある)という感想。
個人的にはそれくらいの年齢の頃の自分の記憶まで混ぜ込んで、具体的なのに現実ではない渋谷が浮かんでいた。
本能のままのケモノのような5日間、それでも金などの社会生活や、もっと大きなできごとに無関係ではいられない人間がくっきりと描かれて、リアルだった。
物語の内容と関係なく身体を動かす特徴的な演出も、今回の作品ではケモノなど具体的なイメージにつながって豊かに感じた。
あんなに関心を持っていた湾岸戦争もイラク戦争もすっかり忘れてしまったが、社会と自分の不機嫌な関係は変わらないまま。そしてここで描かれた渋谷はどんどん昔の姿になっていくんだなあと思った。