作・演出:岩松了
出演者:さいたまゴールド・シアター、さいたまネクスト・シアター、岡田正
2023.1.8. さいたまゴールド・シアター『薄い桃色のかたまり』を配信で観た。
国際交流基金の"STAGE BEYOND BORDERS"という日本を代表する舞台芸術を紹介するプロジェクト内で無料配信されている。
その中でEPAD(緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業)による舞台芸術アーカイブの作品も大量に配信されていて、こちらはEPADからの作品。
特設サイトはこちら。
『薄い桃色のかたまり』は、2017年に彩の国さいたま芸術劇場インサイド・シアター(大ホール内)で上演された演劇作品。
蜷川幸雄が彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督だったときに一般の高齢者による劇団として結成したさいたまゴールド・シアターの公演で、同じく若者による劇団として作ったさいたまネクスト・シアターの役者も出演している。
このふたつの劇団は既に活動終了。残念ながら生で見る機会はなかったが、老人の存在感とか、言い淀み、実際に車椅子や杖の人など、ほかの役者とは違う味があった。役者の素に近い台詞など戯曲が成否を分けている気がする。
岩松了の戯曲は、男女間のよくある言い合いや老人の会話をうまくすくい上げてコミカルな流れを作っていた。本作で鶴屋南北戯曲賞を受賞。
東日本大震災・原発事故による避難指示が解除されたばかりの福島と思われる場所が舞台で、いまひとつ納得感のない恋愛の話を織り込みつつ(岩松作品は私にとってそういうことが多い)、復興・未来への思いを語る。重要登場生物ともいえるイノシシが印象的。
最終シーンはとても美しく引き込まれた。一方で希望が美しく描かれるときの今は大抵ろくでもない。もちろんこれは家も町も荒廃したろくでもない今の話だ。
映像は編集してあり、字幕を表示して見ることが推奨されている。一部台詞が音声で消されていて、音楽が足してある? 映像としては盛り上げてくれた方が見やすいが、文字をガン見してしまうのでそこは若干マイナスだったかも。