波打際の舞台日記

音楽ライブ・演劇を中心に、舞台の感想・意見などを書いています。

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青年団「ソウル市民 昭和望郷編」吉祥寺シアター

作・演出:平田オリザ、出演:井上三奈子、福士史麻、松井周ほか
12/16(土)のソワレをと観た。立ち見も出る盛況。ソウル市民三部作連続上演で、旧作2作も見られるのが魅力か。私は今回はこの新作1本のみ。
1929年の日本占領下のソウルの日本人家庭が舞台で、満州出兵直前、経済が行き詰まり、朝鮮人エリートも育成されて五族協和の幻を見る時代を描く。前2作は差別意識を持たない愚かな人たちのホームドラマという印象で、誰でも無意識に加害者になる怖さを少し感じた位でのどかな観後感だったような記憶があるのだが、今回は露骨に嫌な人間が出てきて、醜悪な支配者層をかいま見せる。ここまで書かないと伝わらないという作者の焦燥感か。この人々がこの先たどる破産や引き上げが見えるようで、暗憺たる気持ちになった。また景気に浮かれつつある現代への批評でもあるのかな。とにかく本が巧いし、若手中心だけど場がたるまず、かつ和やかに。巧い芝居です。吉祥寺の場末まで行く価値あります。