「海へ」作:赤堀雅秋
「フーちゃんのこと」作:マキノノゾミ
演出:鈴木裕美
出演:中村雅俊、半海一晃、アキラ100%ほか
2022.5.8.(日)マチネ(昼公演)で「富士見町アパートメント2022」を観た。劇場は俳優座劇場。千秋楽で客席は9割くらいの入りだった。
「富士見町アパートメント」はアパートの一室で展開する一幕劇を、同じ舞台装置を使って複数の人が書くという企画。前回は2010年で、2つのプログラムで4作品が上演された。「海へ」はそのときの作品の一つ(自分は今回初見)。ちなみにマキノノゾミ作の「ポン助先生」が爆発的に面白かったのが記憶に焼き付いている。
企画からすると同じ舞台装置を使っているのだろうと思うが、見て分からないくらい違う雰囲気。もう少し同じ感が出た方が企画が分かりやすいかもしれない。
「海へ」は40歳代、「フーちゃんのこと」は70歳代(?)の年甲斐もなくはしゃぐ男たちの物語だった。まったく男は、って感じとチャーミングさが両方ある。老人の方が年を取ってる分、可愛げがあった。
10年前の時代劇
鈴木裕美が当日パンフレットに書いていたが、確かに時代劇だと感じた。特に「海へ」の方。
退屈な「終わりなき日常」を生き抜くことが課題だった時代があった。その切実さが強く反映している作品だと思う。
その後、東日本大震災やコロナ禍を経て、退屈な日常はもはや憧れとして描かれるようになった。ありがたいことや願望のレベルがすっかり下がっている。
だから今見ると多くを求めすぎるように思えるところもあるが、マグマのようにくすぶっている充たされない気持ちが丁寧に描かれていて、ぱっと見よりずっとしみじみする舞台だった。
ドラマにすること、他人と接することで解放されるというのは覚えておいてもいいかもしれない。
「フーちゃんのこと」はもう少し現代だった。老いが自分に近付いてきたという親近感もあるかもしれない。ろくでもないけど友人っていいものだなという感想。
カーテンコールは最近すっかり定着してきたスタンディングオベーション。いつまで経ってもまったく慣れないが、押しを応援する作法として、時代が移っているんだなとなんだか素直に受け止められた。時代はこんな数年で変化するんだから。