作:別役実
演出:西沢栄治
出演:山森大輔、浅野令子、稲川実代子ほか
2022.6.17. 新国立劇場の演劇公演『あーぶくたった、にいたった』を配信で観た。
2021年12月15日の公演を収録したもので、新国立劇場「新国デジタルシアター」で1カ月無料公開。
本編は1時間45分、その前に演出家西沢栄治のインタビュー映像が15分あった。
「こつこつプロジェクト」という時間をかけてリーディングや試演を繰り返した作品作りで、アイディアや勢いじゃない丁寧な作りだった。
笑いが引き立てられていて、話も分かりやすかったという感想。
別役実作品に特徴的な、なにが真実か分からない、全員ごっこ遊びをしているような世界だが、終盤に向けて収れんしていくカタルシスがある。そう、この鳥肌が立つ快感は1970・80年台の演劇の魅力だった。
別役実作品は電柱がある道端が舞台で、行き場をなくした人が以前の社会をひきずっているという印象がある。『あーぶくたった、にいたった』では短めのシーン全10場で「世間」の中と外を出入りするので構造が見えやすかった。電柱は世間の中と外の交点なのか。
舞台は多分1970年台。当時と比べて社会は随分変わったということを台詞からも感じるが、世間優先という感覚は今も形を変えて同じなような気がする。
何かにおどおどしていて、迷惑をかけているんじゃないかとずっと不安に思っている社会。
「不幸せだけで生きていこうって決心してしまった」(←イメージ)というセリフが自分に刺さった。
雑誌の別役実追悼特集(以下2冊)を読んでこの作品を見ていないのを残念に思っていたので、ありがたい機会だった。
ユリイカ臨時増刊号(10 2020(第52巻第12) 詩と批評 総特集:別役実の世界1937-2020
悲劇喜劇 2020年 07月号