作:マキノノゾミ
演出:宮田慶子
出演:那須凜、横堀悦夫、松川真也ほか
(ネタバレありです。再演見る方は読まないことをおすすめします)
2024.6.2.(日)劇団青年座「ケエツブロウよー伊藤野枝ただいま帰省中」を紀伊國屋ホールで観た。上演時間は休憩が入って2時間半強くらい(この日はトラブルで一度止まったため不明)。
マキノノゾミ×宮田慶子の組み合わせによる青年座の公演は6作品目かな? 安定の見ごたえだった。
大杉栄とともに関東大震災の混乱の中で憲兵隊に殺されたアナキストとして知られる伊藤野枝の生涯を描く作品。といっても舞台は福岡ののどかな実家で、3回(+1回)の里帰り中の伊藤野枝とその当時のパートナー、家族・親戚や近所の人の会話から描き出す。ケエツブロウは(たしか)カイツブリのことらしい。
社会活動や殺害はいわば話の背景として描かれるので、とにかく「自分が好きなように生きたい!」というエネルギーが強く伝わってきた。そういう意味では最後はともかく幸せに生きた人生だったのかな。
周囲の人は、もちろん常識を重んじる人もいる(でもそれほど気に病んでいない)が、どの人も生きる活力に溢れて、自分がしたいように生きているように見えた。資産も多分社会的立場もある人も、稼ぐ甲斐性がない人も、暮らしに追われて働く人も。主人公は極端な部類だが、ほんのりと「好きなように生きろ」というアジテーションなんだろうなーと感じた。(ただそれには覚悟がいる、という話でもあるが)
人間的魅力に満ちた登場人物と、そして青年座のちょっとギラギラした俳優も魅力的だった。
ラストの墓石代わりの巨大な自然石がなぜか少し可笑しかった。突然部屋にドーンと。
結果としてシンボルになった人生だけど(そしてだからこそ今でも知られるのだけれど)、結果がどうなるかだけが人生じゃない。そんなシンボル(笑)?