波打際の舞台日記

音楽ライブ・演劇を中心に、舞台の感想・意見などを書いています。

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青年団「日本文学盛衰史」吉祥寺シアター

原作:高橋源一郎、作・演出:平田オリザ、出演:大竹直、兵藤公美、山内健司ほか
6/13(水)マチネを観た。満員と思われる。当時の現代口語である伝言ダイヤルやネット掲示板などの語りを交え話題を呼んだ高橋源一郎の小説が原作。明治の文豪たちが日本語の文学を作り出していく姿を描く。舞台は設定をがらりと変え、けれどびっくりするくらい原作に忠実だった。くすぐりどころまでコピー。今をふんだんに取り込んだ。

ネタばれを含むので、以下は原作の話と思ってもらいたい。鎖国が解けて急に海外の文明が流入し、形式に頼らない文章と、それにより表現される内面というものがある、ということを知り、少しずつ文学を「発見」していった若い高揚感はまぶしく羨しい。けれど生きる道を切り開くために切実に表現が生まれた女たちに比べると、男たちのは使命感に燃えているが宙に浮いている。たちまち国家に制約されていくのもそこに理由がなかっただろうか。言葉が思想を作るというのも言葉と心の円環の半分だが、言葉を見出さざるをえない衝動というのもあるはずだと思うのだ。明治の文語体読み物は面白いが近代文学はつまらなくて読めないと思っていた私にとって、あれは実験文学だったのだというのは目からウロコの読み方だった。文学への深い愛情が感じられて胸が熱くなる舞台だった。なんと4場構成。少し明治の文学をおさらいしていくとより楽しめると思います。