波打際の舞台日記

音楽ライブ・演劇を中心に、舞台の感想・意見などを書いています。

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『エレクトラ』(配信)

演出:鈴木忠志
原作:ホーフマンスタール、ソフォクレス
作曲・演奏:高田みどり
出演:アンディニ・プトゥリ・レスタリ、齊藤真紀、ジャマルディン・ラティフほか

2023.5.7. 『エレクトラ』配信で観た。1時間20分。

国際交流基金の"STAGE BEYOND BORDERS"という日本を代表する舞台芸術を紹介するプロジェクト内で無料配信されている。

特設サイトはこちら。

stagebb.jpf.go.jp

エレクトラ』は鈴木忠志率いる劇団SCOTとインドネシアの俳優による国際共同制作作品。2021年11月に利賀大山房で上演された映像が公開された。「スズキ・トレーニング・メソッド」の訓練を積んだ俳優で、演技の違和感はまったくない。

俳優はメインキャストが1人を除きインドネシアの俳優で、男性のコロスもインドネシア。台詞はそれぞれの言語で語り、字幕が付いている。(英語字幕は「自動翻訳」→「日本語」を選ぶと舞台に集中できる>自分への反省)

内容はギリシャ神話を題材にしたソポクレス作の悲劇が元になっている。クレジットによるとホーフマンスタールによる翻案戯曲のようだ。

台詞は思いを語り、その台詞に全体重が乗る演出で、外国語の台詞は呪いの言葉のように感じられた。とはいえ日本語の口調は意外にカジュアルだったので、インドネシア語も実は軽いタッチなのかもしれないが。

エレクトラ役のアンディニ・プトゥリ・レスタリの高い身体能力は見応えがあった。強靭な身体を見るだけでも、戦う意思を感じて舞台を観た満足感がある。

舞台の設定は病院のようだ。主なキャストは車椅子に乗っていて、看護婦や医者もいる。父を殺した母に復讐するという憎しみの連鎖を、幻覚として表現しているように感じた。なにかをきっかけに他者を打ち滅ぼしたいと感じる欲求は2千年近く経っても変わらない。人間の病気の一つなのかもしれない。